分散するなら日本株・欧州株(VGK)・新興国株(VWO)よりも、債券(BND,AGG,TLT)・金(GLD)へのほうが不安定さを減らせます

分析・比較

分散投資をするなら「米国株だけではなく新興国株やその他先進国株にも振り分けよう」とよく言われていますが、投資成績の不安定さ(リスク,ばらつき)を減らすための分散であれば債券や金などの株式以外のアセット(資産)に分散させたほうが効果的です。それを2019年の各資産のデータを用いて説明してゆきます。

 

トップの画像では、米国株・日本株・欧州株・新興国株・米国債券・金のチャートを並べてみたのですが、これだけの数を並べてしまうとわかりにくいですね。

という事で、少しずつ分けてS&P500と比較して見てゆきます。

 

Contents

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米国株( S&P500 )

まずは2019年のS&P500指数の推移を確認しておきます。

※ドル建てのチャートです。
※縦軸を切ってしまうと、複数のアセットを比較する際には公平性に欠けますので、下限は 0ゼロ にしてあります。

S&P500は、年始が最安値、年末が最高値 という典型的な右肩上がりのチャートでした。

爆上げだった2019年』みたいに言われていますが、縦軸の下限を 0ゼロ にするとまたイメージが変わります。
インデックスらしく、動きはやはり緩やかです。



日本株( 日経平均株価 と TOPIX )

つづいて、日経平均株価のチャートを確認します。

※円建てのチャートです。

同様にTOPIXも確認しておきます。

※円建てのチャートです。

2019年は、日本株の指数である、日経平均株価も TOPIXも 緩やかに右肩上がりを続けてくれた1年間でした。

 

※下のグラフでは、「ドル建てのS&P500チャート」と「円建ての日本株チャート」を比較するために、日経平均株価 と TOPIX もドル建てに変換しました。
更に、1年の真ん中6月末日の各指数の終値を100として、新たに指数化 して比較したグラフが下記です。

上半期の上がり方はS&P500が目立っているものの、
下半期は日経平均株価もTOPIXもS&P500と同じような動きをしているのがよくわかります。

はい。

米国株が上げている期間は日本株も上げて、米国株が下げている期間は日本株も下げています。

 

欧州株(FTSE欧州先進国オールキャップ指数)(VGK)

欧州株の指数として、FTSE欧州先進国オールキャップ指数を見てみます。

海外ETFで言うと、バンガードの VGK などがこの指数に連動する成績を目指しています。
(Vanguard FTSE Europe Index Fund ETF Shares)

※チャートは FTSE欧州先進国オールキャップ指数 ではなく VGKのものです。
※ドル建てのチャートです。

米国株、日本株と同様に緩やかに上がっていったのがわかります。

欧州株でも
1年の真ん中6月末日の終値を100として、指数化してS&P500と並べてみます。

似たような動きをしていますね。

注目すべきは、日本株のそれと同様に
米国株が上げている期間は欧州株も上げて、米国株が下げている期間は欧州株も下げているという点です。

 

新興国株(FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ指数)(VWO)

新興国株の指数として、FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ指数を見てみます。

海外ETFで言うと、バンガードの VWO などがこの指数に連動する成績を目指しています。

※チャートは FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ指数 ではなく VWOのものです。
※ドル建てのチャートです。

1月と12を比べると右肩上がりですが、横ばいな印象も受けます。

新興国株でも
1年の真ん中6月末日の終値を100として、指数化してS&P500と並べてみます。

注目すべきは、やはり
米国株が上げている期間は新興国株も上げて、米国株が下げている期間は新興国株も下げているという点です。

 

株式同志は、どの地域を見ても、動き自体は似たような動きをしていましたね。
つづいて、株式以外のアセットとの比較です。

米国債券(BND,AGG)(TLT)

米国債券ETFからは、BND,AGG,TLT の3つをピックアップして見てゆきます。

 

まずは、安定した値動きが魅力の債券ETFである、BNDを見てみます。

Vanguard Total Bond Market Index Fund ETF Shares (BND)
※ドル建てのチャートです。

2019年も安定していました。

 

つづいて、BNDと同じく、安定した値動きが人気の債券ETFである、AGGを見てみます。

iShares Core U.S. Aggregate Bond ETF (AGG)
※ドル建てのチャートです。

AGGもやはり安定しています。

 

つづいて、米国の20年越えの債券を集めたETF、 TLTを見てみます。

iShares 20+ Year Treasury Bond ETF (TLT)
※ドル建てのチャートです。

TLTはS&P500の動きと逆相関する事を期待してポートフォリオに組み入れる米国株投資家も多いETFです。
本当に逆相関しているのでしょうか?
単独で見ると右肩上がりで一緒じゃない?と思ってしまいますが
並べて見てみましょう。

 

米国債券も
1年の真ん中6月末日の各指数の終値を100として、S&P500と並べてみます。

BND(緑)とAGG(黄緑)の2つは本当に安定かつ同じ動きをしています。
動き自体が小さいので、S&P500との逆相関性はわかりにくいですが、一緒に下げたり上げたりはしていない事はわかります。
※ちなみに、この2のETFは、毎月分配金が出るのに自身の評価額もほとんど下がらない という、安定・配当を重視する方にはうってつけのETFです。私もポートフォリオにBNDを一部取り入れています。

続いて赤色のTLTに注目してゆきます。
S&P500(青)とTLT(赤)は、双方とも右肩上がりながら、短期的には逆相関しているのが良く分かります。

例えば
5月はS&P500は下げ続けましたが、TLTは上げ続けています。。
逆に、S&P500は10月以降上げていますが、TLTは下げています。

短期的には、大変よく逆相関しています。
ポートフォリオのリスク(ばらつき)を減らしたいという方に人気があるのが良く分かります。

 



金-GOLD(GLD)

有事の金(ゴールド)と言われる、金の価格とも比べてみます。

金価格の動きは『実物の金』の価格ではなく、手っ取り早くドル建てで確認できる、金ETFの SPDR® Gold Shares (GLD) のチャートを見てゆきます。

※ドル建てのチャートです。

こちらも、単独・単年で見ると、年始が最低価格で年末には上がっておりS&P500と相関している?とも思うのですが、並べてみるとどうなるでしょうか。

 

金(GLD)も
1年の真ん中6月末日の終値を100として、指数化してS&P500と並べてみます。

このように並べてみると、金(GLD)も、TLT(米国中長期(20年超)債券ETF)と同様に短期的には株式(S&P500)と逆相関しているとよくわかります。
株式(S&P500)が上がっていた4月,5月は金価格は下げ
株式(S&P500)が下がっていた9月,10月は金価格は上げています。

そして、金 は TLT とは違って、ドル安の際も道連れにはなりませんので(道連れにならない事が多い、というかドル安の際には上がる事が多いので)、ポートフォリオに組み入れるとリスク(ばらつき)が減るというのも納得です。

 

最後に

最後にもう1回、今回確認した全資産を並べたグラフを確認します。

各資産をドル建てにし、
1年の真ん中6月末日の終値を100として、指数化してS&P500と並べたものです。

分散するなら、米国株だけでなく、日本株や欧州株や新興国株などの地域の株にも分散を!と考えがちです。
が、株式はどの地域であれ、2019年も割とそれぞれが相関した動きをしていました。

そして、債券や金は2019年も株とは逆相関した動きをしていました。
債券や金に分散するのも有効だと言われるのもよくわかります。

私はまだ運用資産が小さく、人的資本(これから働いて稼げるであろう金額)が大きいですので、そこまで短期的なリスク(バラツキ)を減らすことを重視していません。
しかし、運用資産が大きくなり、人的資本が小さくなってきたら間違いなく、米国長期債(TLT)や、金(GLD)もポートフォリオに組み入れることでしょう。

 

当記事では具体例として2019年を切り取りましたが、過去のどの年を切り取っても、株式同士には相関性があり、株式と債券,株式と金には相関性がない(逆相関性がある)というのは同じです。

繰り返しになりますが
分散投資をするなら「米国株だけではなく新興国株やその他先進国株にも振り分けよう」とよく言われていますが、投資成績の不安定さ(リスク,ばらつき)を減らすための分散であれば債券や金などの株式以外のアセット(資産)に分散させたほうが効果的です。

 

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私は株式はS&P500しか保有していませんが、株式以外の資産(アセット)も保有しています。2019年からBNDをポートフォリオに組み入れました。BNDはその値動きが小さいので、S&P500が大きく下げた日のマイナスを打ち消すほどは上がってはくれませんが、一緒に下げるという事はほぼありませんので、S&P500投資のリスク(ばらつき、不安定さ)を減らしたい方にはおすすめできる商品です。※私がたまたまBNDから分散し始めたというだけで、記事中で紹介した他のTLTも、AGGも、GLDへの分散もBND同様におすすめです。

 

BNDは毎月分配金が出ます。S&P500ETF(VOO)は年4回分配金が出ます。この分配金や配当金というのは、最初は小さな額なのでその効果を実感しにくいですが、分配金で1株買えるようになると、その魅力がいっぺんにわかりやすくなります。私がそれを初めて経験したときの記事です。※分配金や配当金を出さずに内部で運用して株価を上げてくれたほうが理論上(税制上)、長期投資には有利です。理論上はそうなのですが、しかし分配金や配当金が出る事が励みになり、長期投資が続けやすくなる人がいるというのも事実です。

 

 

他にも色々と書いていますので、よければ読んでいってください。

コメント

  1. s&p大好き より:

    この記事には感銘を受けました。
    アルゴリズムが発達し、株式市場は米国が下がれば、翌日は日本、中国、欧州と値が下がります。地域分散より、債券・コモディティに分散するのがより分散投資になりますね。
    中国・インド・インドネシア・アフリカ等魅力的な投資先に見えますが、VOOを主に、債券・ゴールドに投資します。

    • SPオヤジ より:

      コメント、ありがとうございます。
      この記事の事すっかり忘れていました(笑)
      めっちゃ良い記事ですね(笑)

      これの2020年版や、2021年版も書きたくなりました。
      思い出させてくれて、本当に感謝しています。